サブ課題C

洋上風力発電高効率風力発電システム構築のための大規模数値解析

サブ課題責任者
飯田明由 豊橋技術科学大学 教授

海の上に作る風力発電装置を、洋上ウィンドファームといいます。我が国の自然エネルギー利用を推進するため、2020年代には洋上ウィンドファームが複数機建設される見通しです。サブ課題Cではウィンドファームの高効率化を実現するための解析技術を研究開発しています。
大規模なウィンドファームが実際に運用されるようになるためには、たくさんの問題があります。風車そのものの性能を向上させること、風車同士の相互干渉による発電量の減少を防ぐこと、翼の疲労破壊を防ぐこと、期待通りの発電量を得るために最適な風車の配置方法を探ること…。実際に建設してからでは対応することができない問題が多くあります。
これらを設計段階で解決するためのさまざまなシミュレーションは、従来の計算機環境で行うことは不可能でした。このシミュレーションをポスト「京」で実現するため、連成解析、風況解析の技術を開発しています。

取組課題

風車後流の影響を考慮したウィンドファームの性能向上

チャレンジングな点

ウィンドファームに設置された風車周りの流れは大小さまざまなスケールが混在するマルチスケール現象です。従来の計算技術ではこれらすべてのスケールの現象を計算に取り込むことは不可能であり、風車の干渉効果を予測しようとすれば計測や経験に基づく簡易的なモデル式に頼らざるを得ませんでした。ポスト「京」を活用してこれらすべてのスケールの効果を取り込んだ大規模かつ超精密な計算を実現することは、数値流体力学分野において学術的観点からも飛躍的な進歩をもたらすといえます。

課題担当者

ウィンドファーム及び風車技術の調査:株式会社風力エネルギー研究所・今村博
流体・構造連成解析技術の開発:豊橋技術科学大学・飯田明由東京大学生産技術研究所・長谷川洋介
風況解析:九州大学応用力学研究所・内田孝紀
⇒ インタビュー 計算工学ナビVol.8 2015年9月発行

高効率風力発電システム構築のための大規模数値解析

~ 概要 ~

概要

~ 「京」での実績と準備状況 ~

「京」での実績と準備状況

~ ポスト「京」で開発するアプリケーションシステム ~

ポスト「京」で開発するアプリケーションシステム

エネルギーシステムにおける計算科学の必然性

洋上風車に使用される風車は直径が100m以上あります。これらの大型の風車が海洋上に数kmの範囲に設置されます。このような大規模な流れを実験室で模擬することは非常に難しく、その一方で実際に作ってみて、性能が出なかったら作り直すというわけにはいきません。また、気象の影響を受けるため、性能を正確に評価するには様々な条件における解析を行う必要があります。このような複雑な条件下にある洋上ウィンドファームの性能評価、寿命評価を行うには、計算科学による支援が必須となります。

計算科学としての革新性

コンピュータを用いて流れ場や振動を計算する場合、全体を小さな要素に分けて(離散化)、各時刻における物理量を求めていきます。このとき、要素の大きさや時間刻みは物理現象ごとに異なります。洋上風車は翼面の小さな渦(直径1mm以下、特性時間;ミリ秒)からブレードの後方にできる渦(直径数10cm、特性時間:秒)、風車全体の渦(直径数10m、特性時間:分)、気象条件に依存する流れ(直径数100mから数km、特性時間:分から数日)など取り扱う渦の大きさや時間スケールが多岐にわたります。このようなマルチスケールの現象を計算科学として取り扱うための工夫が必要となります。また、振動と流れ場を同時に解析するための連成解析技術をマルチスケールで実施するための技術が必要となります。